壽夭之異
原文 (原本の文字数を反映・但し原本は縦書き)
虞搏曰人之壽夭各有天命存焉夫所謂天
命者天地父母之元氣也父為天母為地父精母
血盛衰不同故人之壽夭亦異其有生之初受氣
之兩盛者當得上中之壽受氣之偏盛者當得中
下之壽受氣之兩衰者能保養僅得下壽不然多
夭折雖然或風寒暑濕之感於外飢飽勞役之傷
乎内豈能一一盡乎所稟之元氣也故上古聖人
甞百草製醫藥乃欲扶植乎生民各得盡其天年
也傳曰修身以竢命而已必須盡人事以副天意
則凶者化吉亡者得存未嘗令人委之於天命也
是故醫者可以通神明而權造化能
使夭者壽而壽者仙醫道其可癈乎
断句 (原文に句読点を挿入・改行は任意)
虞搏曰、人之壽夭、各有天命存焉。
夫所謂天命者、天地父母之元氣也。
父為天、母為地、父精母血、盛衰不同、故人之壽夭亦異。
其有生之初、受氣之兩盛者、當得上中之壽。
受氣之偏盛者、當得中下之壽。
受氣之兩衰者、能保養僅得下壽。不然、多夭折。
雖然、或風寒暑濕之感於外、飢飽勞役之傷乎内、
豈能一一盡乎所稟之元氣也。
故上古聖人、甞百草製醫藥、乃欲扶植乎生民、
各得盡其天年也。
傳曰、修身以竢命而已。必須盡人事以副天意、
則凶者化吉、亡者得存、未嘗令人委之於天命也。
是故醫者、可以通神明而權造化、能使夭者壽、
而壽者仙、醫道其可癈乎。
現代語訳
壽夭之異(じゅようのい、ことなり)
虞搏が説くには、
「人の長寿と夭折とは、ぞれぞれの天命にある。
その天命とは、天地父母の元気である。
父を天とし、母を地とし、父の精と母の血との、
盛衰の違いがあるゆえ、人の長寿と夭折ともまた違うのである。
その生命の初めに、受けた気が両方ともに盛んな者は、
上・中の寿命を得る。
受けた気に偏りがある者は、中・下の寿命を得る。
受けた気が共に衰えている者は、保養をして、
ようやく下の寿命を得ることができ、
そうでなければ、多くは夭折する。
とは言え、外には風・寒・暑・湿などに感化され、
内には飢えや飽満、労役に傷められれば、
どうして授かった元気を全うできようか。
故に太古の聖人は、あらゆる物を試して医薬を作り、
人民を育み、それぞれの天寿を全うさせることを願ったのである。」
『伝』に言うには、
「修身して天命を俟つのみである。
必ず人ができる限りのことをし尽くして、天意が助けるのであり、
凶が吉となり、死ぬ運命の者が生きるのも、
人が天命に委ねたのみの結果ではないのである。
であるから医者は、神明に通じて造化を商量することができ、
夭折の者を長寿にさせ、長寿の者は仙人にせしめることができる。
医道をどうして廃することができようか。」